- 「…さてと。やっとここまで出来たわ」
- 何かを編んでいた手を止め、ほう、とため息をつくレベッカ。
- (これなら、なんとか間に合いそうね)
- これまでの成果を確かめながら、やれやれと安堵する。
- 広げてみるとレベッカの背丈くらいあるそれは。
-
- プレゼント
-
- 思い立ったのは1ヶ月ほど前。毎度変わらず衣類の整理が苦手なディーンを手伝っていた時の事。
- 「ん〜、こいつもだいぶ擦り切れてきたなぁ」
- 「ん?」
- と見てみると。ディーンが手にしているのは、かつての「旅立ち」の頃から彼がずっと身につけていたマフラー。
- 「もう4年くらい使ってるものね」
- 「ああ。そろそろ新しいのと代えたほうが良いのかもなぁ…ま、まだしばらくは大丈夫だろうけどな」
- そんな会話があって。
-
- それなら、せっかくだから手編みのものをプレゼントしてあげたいというのは恋する少女としてはごく自然に浮かんできたことで。
- それから毎日少しずつ編んでいって。なにしろ、いまや彼女らは「先駆者」と呼ばれる存在で。あちこち駆け回っていてとても編み物どころじゃない日もあって。
- それでも1歩1歩の積み重ねで確実に前に進んでいくように、だんだん完成形へと近づいていって。
-
- 「よしッ!これで完成、っと」
- 1ヶ月近くかけて編み上げたマフラー。もともと彼が使っているものと似た模様で、でも彼女のアレンジも加えたそれは、試しに巻いてみると狙い通りふかふかとして暖かくて。
- (…それにしても、予定通り間に合って良かったわ)
- ふとカレンダーを見る。3日後のところに印がつけられていて。
- (「あの日」だったら、プレゼントしたって不自然じゃない…よね…?)
- テーブルに目を戻してみると。買い込んできた毛糸が目について。
- (ん〜…意外と余ったわね。せっかくだから他にも何か編もうかな…)
- と、何か別の物を編み始めるレベッカ。
-
- そして、印がつけられていた日。
- 「ディーン、これ…」
- 「え!?どうしたんだこれ?」
- 「ほ、ほら…今日は、ディーンの誕生日でしょ?前、だいぶ擦り切れてるって言ってたから…」
- 「あ、ああ…えーと、着けてみていいか?」
- 「う、うん…」
- マフラーをいつものやり方で着けてみるディーン。
- 「ど、どう…?」
- 「やっぱり新しいと肌触りとか全然違うな。…もしかしてこれ、レベッカが編んだのか?」
- 「あ、うん…」
- 「そっか。サンキュ、レベッカ!嬉しいぜッ!」
- 「うん!どういたしまして」
- 笑顔で答えてきたディーンに、レベッカも笑みが広がる。
-
- それから数週間後。
- 「出来た…っと」
- 余りの毛糸で、何かが完成したようだ。
- (これ着けてたら…ディーン、どんなカオするかしら…?)
- と、なんだか顔が赤くなるレベッカ。
- (ん…でも、アイツの事だから気がつかないかもしれないわね…)
- まぁそれでもいいんだけどさ、そんな呟きが天井に吸い込まれていった。
-
- 彼女の予想通り、ディーンは気がついてないようだが。
- カポブロンコでは、こんな会話が交わされていた。
- 「レベッカちゃん、頑張ったわねぇ」
- 「ホントそうよね。手編みのマフラーってだけでもなかなかなものだけど…」
- 「でも、ディーンは気がついてなさそうだね」
- 「フフ、それはそれで面白いんじゃない?」
- 「そうね。自分がもらったマフラーと、レベッカちゃんが着けてる手袋が同じ模様だって気がついたら…」
- 少女が編み物に託した精一杯の勇気。それを彼が知るのは、もう少し後のこと。そのときのディーンの反応はものすごく面白かった、とはおばちゃんたちの弁である。
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DORAさんのHP、DORA’S ISLAND の一周年&一万HIT記念企画でリクエストさせていただいたものです。
もう!もうディンレベのなんて自然でかわいいことかッ!!レベッカいじらしい!
難しい注文をつけてしまったみたいでしたが、すばらしい味付けで調理していただきましたッ!
つかず離れずがしっくりきます。すてきだー!
DORAさん、本当にありがとうございます&一周年おめでとうございますー!
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